亡くなった母の銀行口座の手続き

さて、亡くなった母の銀行口座の処理について書いておこう。
 
以前、母が脳梗塞で倒れ半身不随となり失語となった後、母の定期預金を解約する際の大変さを実感したので複数あった母の銀行口座を集約して1つ(某Y銀行)にしており、かつ定期解約の際の経験があったので、今回は比較的すんなり済んだと思う。
 
まず、亡くなった人の銀行口座のお金を(生存している)他の人に渡すのは相続になる。したがって、お金的にみると口座の解約とお金の引き落とし、または他口座への振り込みとはなるが、法律に従った相続処理を行うことになる。話を簡単にするため、今回のうちのように、母が亡くなり夫である父はまだ生きており、子供は私と兄の二人だけということで書いていく。かつ、遺言は無く、母のお金は全部父の口座に移動し、兄と私は受け取らない。また、父は高齢のため手続きができず、こういうことに慣れている私が全部手続きを実施。また、母の銀行口座はY銀行の山形市の支店にあり、ただ私は東京在住である。以下の説明は今回のY銀行での相続をベースに記載するが、基本は相続の法律に則っているはずなので、多少の差はあってもどこでも同じと思われる。
 
手続きは以下のステップで進められる。
 
  1. (できれば口座のある) 銀行店舗に行って、相続手続きを相談する。ここで、相続に必要な書類を確認する。
  2. 必要な書類を持って銀行に行き、相続届け(書類)をもらう。処理対象の通帳、銀行印の持参も必須と思われる。さらに私の身分確認のために免許証等も必須と思われる。なお、ここでもらう相続届には、亡くなった人の口座番号と最終預金高が記入されているので、完全なブランクシートではない。要するに、この額のお金をどのように相続処理するのか、を記載するのが相続届。
  3. 相続届に、全相続人(今回の場合は父と兄と私)が記入、実印での捺印し、振込口座を記入する。相続人が全員同じ場所にいるのであれば話は早いが、異なる場所にいる場合、順番に回して記入、捺印する必要があるので大変。
  4. 記入済/捺印済の相続届を持って銀行に行く。また、振込先の記入が正しいことを確認するため、振り込み先の通帳もあったほうがいいと思われる。さらに処理対象の通帳、キャッシュカードも持参して引き渡す。
  5. 現金で受け取る場合は店舗に行くが、振り込みの場合は振り込みを待てばいい。
今回は上記ステップの 1 と 2 は一回で終えた。事前に電話で相談し、必要な書類をほぼ用意してから山形の支店に行ったからである。最初の電話で、いきなり銀行に行っても相続届はもらえないと言われなぜだろうと思っていたが、相続方法などにより相続届の用紙が異なるということと、そこに対象口座の最終残高が記入されるため、その口座の存在とせめてその人が亡くなったことの証明が無いと発行できないからであろう。
 
さて、用意すべき書類は以下となる。相続の方法によって異なるが、上で説明したもっともシンプルなケースの場合である。なお、役所からもらった書類は銀行側はコピーを取るだけで返却するので、余分に取っておく必要はない。
 
  • 亡くなった母の生まれてから死亡までの連続した戸籍謄本すべて。単に戸籍謄本ください、ではなく、相続のために生まれてからの全部の戸籍謄本と言って役所でもらえばいい。昭和の人は、昔の手書きの謄本から5セットくらいの謄本がどさっと渡される。謄本1つ300円くらいだろうと思って役所に行ってはいけない。1冊ごと費用が発生するので数千円必要となる(銀行側はコピーをとって返却することをしらなかったため、余分に発行してももらった結果、他の書類発行も併せて8000円くらいかかった。実際は2000円くらいで済んだと思われる)。これを使って、銀行が誰が相続人であるのかを確認する。例えば隠された相続人がいるのに相続届に記入していないと、不正に相続しようとしていることになるわけで、それを銀行側が見極めるために必要な書類である。
  • 法定相続人である父、兄、私の戸籍謄本。これは上記の生まれからのすべての謄本ではなく、通常の戸籍謄本(全部事項証明書)。父の戸籍謄本には亡くなった母の記載があるが、母の欄には亡くなったことを示す [除籍] と記入されているはず。これをもって、相続関係を確認し、かつ母が亡くなったことを確認する。亡くなった際、医者が作成し役所に提出する死亡届は不要。除籍と書かれた戸籍謄本で死亡を確認する。また、死亡届を役所に提出した後、役所が言うには「戸籍が動いている」期間が1週間程度あるため、除籍と記入された戸籍謄本をもらえるまでは死亡届の後、1週間程度かかる。役所に確認すると、いつから更新された戸籍謄本を入手可能なのかは教えてくれるはず。
  • 法定相続人である父、兄、私の印鑑(登録)証明書。これと同じ印鑑で相続届に捺印する。またこれと同じ住所を相続届に記入する(印鑑証明と戸籍の住所のどちらを使うのかは不明。おそらく印鑑証明と思われるが要確認。同じ住所でも戸籍のほうが最後の部分が無く短いですよね。印鑑証明はフルの住所なので、多分こっちと思われる)。
基本はこれらの書類を取り揃えて銀行に行き、どのように相続するのかを確認した後、それに従った相続届の用紙を銀行からもらうのであるが、今回は私が簡単に山形には行くことができないこと、かつ、兄から郵送してもらった書類(戸籍謄本と印鑑証明書)が間に合わなかったこともあり、兄の書類だけ後追いでの提出ということにして山形の店舗で相続届をもらうことができた。また、また山形に行くこともままならないので、今後は東京支店での手続きということにしてもらった。
 
実際にお金を相続することを承継というらしいが、今回は父だけが承継するので父が単独承継者であり、兄と私は(相続の権利はあるけれども)預金等を承継しない相続人、ということになる。相続届には、亡くなった母の預金を父が100%承継する、そして兄と私は相続の権利はあるけれどもそれを放棄する、ということを署名し、実印を押し、そして振込先はここ、という情報が記載されていることになる(承継する人を記入する欄と承継しない人を記入する欄に分かれている)。実印が正しいことを印鑑証明書で確認する。記載する住所は、たとえば印鑑証明書では二町目三番地と書かれていても 2-3 のように簡易的な表記でも受け付けてくれるが、完全に一致させたほうが間違いはないであろう。
 
なお、今回は100%父が承継だったので最初は話題にも上らなかったが、後から確認したところでは、例えば兄も私も承継はするが、振込先は父の口座のみ、ということもアリとのこと。父の口座に振り込まれた後、どのように分けるのかはどうぞご自由に、ということらしい。ただし、それではもめるので、最初から例えば父の口座にいくら、兄の口座にいくら、私の口座にいくら、とする場合は、また別の相続届があるとのこと。私がもらったのは単独承継のもっともシンプルなもので、振込先が1つしか記載できないものであった。なので、最初に銀行側はどのように承継するのかを確認し、それにあった書類を出してくれたようである。
 
さて、山形で相続届をもらってすぐ、父に住所、氏名を記入してもらい、父の実印を押した(戸籍や印鑑証明はその前に入手済み)。高齢の父に記入させるにはリスクがあったので、鉛筆で薄く書いてこの上をボールペンでなぞれ、と父に言っても、父はその薄く書いた氏名、住所は正しい、と言うだけで書いてくれない(耳が遠いので会話がなかなか成り立たない)。いやいや、そーじゃなくてさ、これは鉛筆だから、この上をボールペンで書いてほしいんだよ、と言ってもなかなか書いてくれない。また、いざ書こうとするとその下の欄に書こうとしたりしてほとほと困ったが、なんとか書いてもらった。これが今回の相続の最大の山場であった。私の記入と捺印は東京に戻ってから行い、それを兄に郵送して記入、捺印してもらい、またそれを私に送り返してもらった。こんなシンプルな家族、相続でもこんなに大変なのに、実は隠し子がいたとか、海外に住んでいるとか(その場合、印鑑証明はどうするんだろう?)、行方不明とか音信不通とか、そういうことを考えると気が遠くなる作業である。また兄も私もさっぱりした人なので100%父が承継でよかったが(どっちにしろ、そのあと、兄や私が山形に行った際にその口座のお金で買い物したり、デイサービスの支払いをしたりしているので)、通常は俺は母の世話をこれだけしたのにお前と同じ割合では納得しない、とかでもめるのか?また、1つの口座でも大変なのに、それが複数あったら複数回これを繰り返すことになるとぞっとする。事前に1つにまとめておいてよかった。数千円くらいしか入っていない口座が残っていたら、手続きの手間とか考えると放棄するほうが安くあがることになるのであろう(銀行側は休眠口座が増えるので困るはずではあるが・・・)。
 
そして最後の書類を持ってY銀行の東京支店に行き、無事、書類は全部受理され、あとは1週間程度で振り込まれることになった。ただ、口座の店舗とは違うところでの手続きなので、かつ、振込先の口座(これも母と同じY銀行の支店)の通帳は持っていなかったので、確認のため東京-山形間で電話連絡し合っていたようで、結構待ちがあったけれども、銀行側も丁寧に対応してくれたと思う。
 
東京支店で書類は受理され、本当はこれで終わり、のはずであったが、ここで最後の山が訪れた。もう使用できない母の通帳は父のところに書留で送られます、と言われ、うーん、それはどうかな、受け取れるかな?とつぶやいたところから、終わりかけていた手続きがまた長くなってしまった。えっ?簡易書留で配達されるのでサインして受け取ってもらえばいいのですが?と銀行の担当者が当然の反応。いや、それはそうなんですが、じつはそれが大変なんですよ、以前、父が新たな銀行口座を作ったけれどもキャッシュカードを受け取らないことがありまして・・・と説明。郵便配達で来たけれども会えず、再配達でも会えず、要連絡にも応じず、ということで、キャッシュカードは銀行に戻ってしまった、銀行は何度も電話したけれども電話に出ない(耳が遠いので聞こえない)、高齢になると大変でして・・・、なので私が受け取ります、と言うと、いや、これは相続する人に送ることになっておりまして・・・と銀行側も困り顔。なるほど、振込先は父の口座だけにしておいて、ただし私も承継することにしておけばよかったのですね、ということにはなったが後の祭り。さすがに通帳の送り先までの想定は銀行側もできなかったようだ。父に送って受け取れなかった場合、戻されますよね、どこに戻りますか?と聞くと、東京支店ですという回答。う~ん、ここに戻ったら最悪。私が受け取れないわけだから。山形の支店に置いてもらうことはできませんか?と聞くと、できると思いますが、お父様は受け取りに来れますか?と聞かれ、これもう~ん。タクシーで行けばできるとは思うが、手ぶらで行っても受け取れるものでもないのでこれも難しい。そもそも電話で依頼しても、そんな高度(?)なことを耳が遠い父に通じるわけはない。山形の支店に置いてもらい、私が受け取りに行くというのはダメですか?でも、相続しないのでダメですよね?などと話しているうちに、担当者が相談しますのでしばらくお待ちください、と言って後ろに下がって調整を始めた。待つことしばし。結論としては銀行側が状況を理解し、大丈夫と思うが東京支店で私が受け取る方向で調整してくれ、もしそれがダメな場合、次の手として山形の支店で私が受け取る、ということに落ち着いた。すでにゼロ円になっている通帳でもう使えない通帳とはいえ、銀行側も勝手にルールを曲げることはできないはず。別銀行の話であるが母の定期を解約する際も、書くことができない、話すことができない母の署名が無いと解約できないという銀行側と押し問答があったが、最後は妥協案で解決に持ってきた。銀行側も他人のお金を預かっているので安易な対応ができないのはわかるし銀行側を責めるつもりも毛頭ないが、今回も理解を示してくれて妥協案を作ってくれた。事前にわかっていれば相続のやり方を変えていたのだけれども、さすがに通帳の返還は想定外。予定通りであれば昨日振り込み、そして来週後半くらいに通帳の返還というスケジュール。その後、銀行側からは特に連絡が無い。通帳が東京支店に戻ってきたら連絡します、ということになっているので、おそらく東京支店での受け取りになると思われる。それで完全に終了となる。